コラム

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SANKYO WOMANスペシャルコラム


富田 絵里香(Tomita Erika)

富田 絵里香(Tomita Erika)

  所属先

  AREA 外構&お庭の設計事務所・手描きの図面屋

  保有資格

 ・1級造園施工管理技士
 ・一般社団法人 日本エクステリア設計協会正会員

  庭への想い

  手描き一筋、暮らしと夢のAREAを描き続けます。
  付加価値が感じられる住まいの提案を心がけ、 住み心地、デザインの満足度を高めていきたい。

  ~主な経歴~

  ハウスメーカーエクステリア部門、外構設計施工会社 15年間勤務を経て独立
  AREA外構&お庭の設計事務所立ち上げ12年目になります。

主な作品
主な作品

【 第4回 】 北欧デザインと旅のお話『スウェーデン編』

北欧デザイン考察の旅をご紹介します。今回は、スカンディナヴィア半島のバルト海側に鎮座する国スウェーデン、その首都ストックホルムのお話をさせてください。

人口約87万人の首都ストックホルムは、大小さまざまな群島で構成されています。

北のヴェネチアとも呼ばれていて、バルト海につながる運河や緑豊かな公園などがあり、水辺の景色もとても美しく、北欧最大級の都市でありながら、自然が身近にある環境でした。

18世紀以降、直接戦火に巻き込まれず、20世紀以降になってから、現代建築に建て替えられていったようで、近代的なビルが違和感なく点在つつも、中世の面影を残す建物が多く残っている印象です。

「魔女の宅急便」の舞台の一つとも言われる街で、程よい勾配の坂道や路地あったり、角を曲がるとアイスポット的にシンボリックな教会建築が突如現れるシチュエーションが多くあり、街を散歩しているだけでもワクワクしました。


先ずは、ストックホルムの代表的な観光地、旧市街ガムラスタンをご紹介します。

新市街の中央駅からトラムで1駅、景色を楽しみながら徒歩でも行ける距離の場所。ガムラスタンとは、旧市街を意味する言葉。13世紀頃に発祥した歴史ある街で、中世の名残を感じさせる石畳の道はとても風情があります。古い教会や美術館、かわいいカフェやレストランも多く、小さな路地が入り組んだ、「世界で一番美しい古都」と言われています。中心部にあるストールトルゲット広場、ノーベル博物館、王宮etc…観光の見所が多くあります。

私たちがこの街で注目したのは石畳でした

17世紀から18世紀の古い町並みに網の目のように張り巡らされた細い路地の石畳は歴史の深さが伝わってきます。王宮周辺の石畳は修復などの際に敷き詰め直したのかな?新しさを感じるデザインで玉石を利用した面白い設えでした。迷路のような狭い路地を抜けると、突如ポケットパークのような空間が出現することがあります。シンボルの樹木をパラソルがわりにしたテラス、緑の蔦が垂れ下がり、柔らい光に包まれ、リアル魔女の宅急便の世界に迷い込んだような感覚。あの場所は一体どこっだったなのだろう。。。なんて思うほど幻想的な場所でした。

▲カラフルな建物に囲まれたノーベル博物館がある広場

▲玉石敷きの王宮周辺。 この辺りは新しい感じの石畳


▲スウェーデンの国旗が揺らめく路地。もっと狭い路地も迷路のように沢山あります。

▲小道を抜けて、突然現れる素敵な空間。古い石畳、古いU字型側溝が気になります。職業柄か?

私達の旅では、ストックホルムで重要ミッションとした場所は、2箇所ありました。

まず1つ目は、「森の墓地・スコーグスシュルクゴーデン」

▲トラムの駅から墓地へとつながる場所には、木立ちのトンネル。瞑想の世界へ

20世紀以降の建築作品としては初めて世界遺産に登録されたランドスケープの傑作です。北欧の近代建築に多大な影響を及ぼした建築家グンナール・アスプルンドとシグルト・レヴェレンツが1910年代から25年の長期にわたって計施工された、世界中で墓地のデザインに影響を与えた場所す。

北欧の人々にとっての死生観、人は死ぬと精神的な故郷「森」へ還って行く人間の運命を建築表現で実現させた場所です。木立ちの中に置かれた墓標、「小さな森のチャペル」「復活のチャペル」「森の火葬場」などの建物が森に包まれるように存在しています。100ヘクタールという広大な土地には、森のスペースと一面芝生に覆われたの緩やかな丘があり、葬儀に参列する遺族の気持ちを配慮した計画がされているそうです。地といってもそこは自然豊かな公園を散歩しているような心穏やかになる場所でした。現代の地球は環境問題を抱えていますが、進歩的主義が主流だった20世紀前半に、人間も自然の一部と表現されていたのかと思うと感慨深いものがあります。

▲シンボリックな十字架がある丘。
 一緒にいったH女史が写っていますが。。。

▲復活のチャペル

▲観光の人も歓迎してくれる 、ビジターセンター。とんがり屋根のビジターセンター

▲葬儀の際、遺族の方々はこの景色を眺めながら最後のお別れをする。この日は雨が降ってきたので悲しみを感じます。

そして、私たちは2つ目のミッションへ。

昔、王室の夏の別荘地して利用されたたローゼンダール城があるユールゴーデン島の奥にある、「ローゼンダール・ガーデン」です。

ユールゴーデン島の地図。遊園地や博物館などの施設もありますが。ローゼンダールガーデンは地図上右側、森の中にあります。

5000ヘクタールの広大な庭園で、果樹園、野菜畑、花畑、温室を改造したカフェなどがありす。野菜畑ではドイツ人のシュナイダーが提唱した1番古い有機農法「バイオダイナミッ」を用していているそうで、地球に生きるものは太陽や月の満ち欠け、惑星などに関連があるという考えから、宇宙のリズムに基づいた「種まきカレンダー」を利用したり間引きをす糞や水晶、花や樹皮を使った調剤を使用することも特徴だそうです。このローゼンダール・ガーデンは、新市街地からトラムで15分ほどの場所で降り森の木立を抜けた場所にありま

都会の延長線の中にあるような近さです。ここでは庭園で美しさと安らぎをを楽しみつつも、りんごの樹の下でランチをしたり、芝生で寝そべったり、カフェではここの畑で収穫した野菜を使たお料理、自家製パン食べたりと、体全体で自然浴ができるといったところでしょうか、人と自然を繋げてくれる入口のようで、自然を間近に感じて過ごせます。北欧の人たちの自然との距離感、精神性を森の墓地に引き続き深く感じました。

▲あらゆる場所にベンチテーブルが置かれています。

▲このガーデーンの名物でもあるりんご園

▲温室が並んでいますが、カフェやガーデンショップ、ワークショップなどとして利用した空間になっています。

▲カフェの横にあるパン売り場。スズメがお店の中にもパンくずを狙って集団侵入してました!店主VSスズメの戦いもあります!

▲ユーロガーデン島からガムラスタンへは水上バスの移動がオススメです。ストックホルムの素敵な街並みを水上から見ることができますよ!

海外旅行での楽しみって、観光、食はもちろんですが、宿泊場所って大事ですよね。

北欧へ行こうかと考えている方へのアドバイスとして、私たちが滞在したClarion Hotel Sign(クラリオンホテルサイン)のご紹介をいたします。

ベルリンやワシントンのスウェーデン大使館も手がけた、スウェーデンを代表する建築家ゲルト・ヴィンゴ・ ヴィンゴードが手がけたホテル。

ファサードは表面加工が異なる違う黒い御影石の彫刻的な要素と、窓ガラスのフラットな現代的デザインの組み合わせが印象的でした。御影石の部分は雨が降ると濡れて黒くなったり、窓のガラス面には、映り込む光や天候の具合で見る時々でファサードも表情が変貌していました。

▲外部空間であまり見かけないペンダント型の照明。0mほどあろうかと思う天井高の空間に連続して設置され目を引きます。

このホテルはとても見所が多くありまして、エントランスホールやロビーに、ヤコブセンの椅子が沢山配置されていたり、インテリアのクオリティーも建築と肩を並べるほどのクオリティーで、年季が入ってより美しくなるホテル空間を目指したとのことです。北欧の巨匠デザイナーの家具や、その伝統を受け継ぎながら今現在活躍中のトップデザイナーの家具の数々が全館にあふれています。4つあるエレベーターには、JAZZ、POPSなどとテーマごとに内装が違っていて、ターンテーブル、ギターなどが設置されていた遊び心空間もデザインされています。

▲ホテルレセプション。黒い御影石を大胆に利用したデスク。割り肌面と磨き面を使い分けてあってカッコいいです。

▲コンセプトの違う4つのエレベーター。どれが来るのか待つ時も、乗っている時も楽しい時間。


屋上には温水プール、サウナ、スパトリートメント(有料)この空間には、フィンランドのエーロ・アールニオがデザインした1960年代のアイコン的な存在の透明アクリルのシャボン玉のようなバブルチェア椅が吊り下げられたテラスがあってストックホルムの景色を眺められます。ホテルだけでも1日充分に満喫できそうな空間が広がっています。

▲ホテルの部屋から見る景色。

まだまだストックホルムだけでも、見どころが沢山あります。最後に写真だけ紹介します。

▲新市街にも風格ある建物が多く立ち並んでいます。

▲街中も緑があふれています。


▲ノーベル賞の晩餐会が行なわれる市庁舎。


▲地下鉄の各駅ごと、コンセプトの違ったアート空間。


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