コラム

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SANKYO WOMANスペシャルコラム


富田 絵里香(Tomita Erika)

富田 絵里香(Tomita Erika)

  所属先

  AREA 外構&お庭の設計事務所・手描きの図面屋

  保有資格

 ・1級造園施工管理技士
 ・一般社団法人 日本エクステリア設計協会正会員

  庭への想い

  手描き一筋、暮らしと夢のAREAを描き続けます。
  付加価値が感じられる住まいの提案を心がけ、
  住み心地、デザインの満足度を高めていきたい。

  ~主な経歴~

  ハウスメーカーエクステリア部門、外構設計施工会社 15年間勤務を経て独立
  AREA外構&お庭の設計事務所立ち上げ12年目になります。

主な作品
主な作品

【 第16回 】 バンコク旅、建築探訪やあれやこれやの話  *後編*

バンコクの癒し旅を旅ログ風に前編、後編にてご紹介しており、今回は後編です。

前回は、宿泊したマハナコーンタワー内のインテリアが注目されているThe standard ホテル、驚きの建築デザインのシンドーン・ケンピンスキーホテルバンコクを中心に書かせていただきましたが、今回は今バンコクで注目されている観光地として定番だけど行ってよかったところやアートな空間で注目されているスポット、おすすめのお土産などバンコクの新旧の歴史を感じる場所をご紹介していきます。


まずはバンコクに渡航したことがある人は既に行ったことがある人も多いかと思いますが、私自身はずっと行けてなかった場所、「THE JIM THOMPSON HOUSE MUSEUM・ジムトンプソンの家」。

タイの古い建築様式の建物が6棟連なって構成されています。

場所はBTSシーロムラインの始発終着駅、National Stadium(ナショナルスタジアム)駅から徒歩5分程度に位置する場所なので便利です。駅がある大通りからは一歩入った少し殺風景な路地を進むのですが先ほどまでの騒音は遠くにうっすらと聞こえる程度の静けさ、この先に本当に目的地はあるのだろうかと不安に思いつつ進むと現れる南国系の樹木に囲まれた空間。間違いありませんでした。この場所はタイシルク最高級ブランドの創始者ジム・トンプソンが第二次世界大戦中にタイに派遣されたのち終戦後もタイに残りタイシルクの事業で財を成した人物の生前の住居跡。現在は当時のままの生活が伺える家具や収集した古美術コレクションも見ることができる博物館として一般公開しているところです。

当時の生活を想像させるシルクのファブリックと家具。窓から望む景色は絵画のようにインテリアの一部として存在しています。

道路に接する入口の間口はそんなに広くはありませんが、奥行きがとても深く敷地の中には何棟もの赤く塗装されたチーク材を用いたタイの伝統的な建築である高床式住宅が連なった住居跡があり魅惑的な雰囲気が醸し出され心惹かれ、敷地の奥に進むごとにその時代に引き込まれていくような感覚になります。なぜ道路側の間口が狭いのかというとバンコクはかつて水上交通がかなり主流の移動手段として使用されていたため住宅は横に流れる運河に沿って建てられているからなのでしょう。敷地内にはかつて使用されていた船着場もあり当時の生活を垣間見ることができます。

高床式の建物は床面が地表面よりも高い位置に住居が作られているため、通気性に優れていますので高温多湿な東南アジア、日本でも多く建てられていた様式ですが、建物には開放的な開口部もいたるところにあるため風が抜ける道が作られるおかげで蒸し暑い気候のなかでも体感的にはとても心地よく過ごせるようにと配慮されています。ガラスのない窓も沢山あり窓からは庭園が絵画のような額縁庭園として演出され、インテリアのように存在しています。そして目に飛び込む綺麗な緑がよりリラックス度を高め心地よさを増しているようです。バンコクの街中に居るとは思えないリゾート感に包まれる空間です。


床下の空間は、庭に囲まれたテラスかのように存在し、古美術コレクションの仏像がオブジェのように設置され美術館のような空間利用がされています。ジムトンプソンの家は、基本的に小グループのツアー見学によってまわります。日本語対応も多少ありタイミングが合えば参加できます。メンテナンスが行き届いた南国特有の植物が植え込まれた美しい庭など、都会のオアシスといえる空間は必見です。敷地内のショップでは、もちろんお楽しみのタイシルクのお買い物もできます。定番の観光スポットですがまだ行かれたことのない方はぜひ一度行ってみてください。

高床式建築の床下空間は、風の抜けが良く日陰が心地いいテラス空間のよう。


次はバンコクといえばチャオプラヤー川の高級ホテルや寺院などをイメージする方も多いかと思いますが、そのエリアからさほど遠くない場所にあるウォールアートや、倉庫群をリノベーションし倉庫街に多くの若者が集まる場所へと変貌したバンラック地区。ショッピングとアートの両方を満喫できるエリアです。鉄道の駅が近くになく、BTSシーロム線Saphan Taksin(サパーンタクシン)駅から徒歩20分ほどの場所なので、日差しが強く暑いタイではタクシー利用がおすすめです。私は「ウェアハウス30」と「ATT19」2軒行きました。

「ウェアハウス30」は第二次世界大戦時代の倉庫をリノベーションされていますが無機質な倉庫の扉が規則的に並んでいます。アートギャラリー、インテリアショップ、カフェなど様々な形態のお店が複数あり、倉庫特有の天井の高さや特徴的な構造、広々とした空間を生かし自由なレイアウトによって演出されているところが魅力です。地元タイの新世代のデザイナー、アーティストの発信の場としても活躍しているそうです。

ウェアハウス30 第二次世界大戦時に作られた倉庫をリノベーション


そしてそこから程近い場所にある「ATT19」、こちらは、120年の歴史を持つ建物をリノベーションしたもので、アプローチの両脇にストレリチアが植え込まれてあり、その園路を抜けると現れます。古いチーク材の材料を尊重する方法で復元された再生木材、タイル、レンガのみを使用してモダンでありながらこの場所の歴史をリスペクトするかたちで再生されています。

「ATT19」
ストレリチア、ファイアーバードのトンネルアプローチ

「ATT19」
1世紀の歴史をもつ元中国語学校、ドアは中国の寺院の再利用。
建物と構造はできる限り再生、リサイクル、または再利用された材料でリノベーション

空間全体がアートの息遣いを感じる1階のフロアでは現代アート、ヴィンテージの服、家具などの販売。それらはタイに限らず世界中のデザインのものがあり、ごちゃ混ぜのようですがかっこいい、オーナーのセンスの良さを感じます。2階はレンタルスペースとして企画展示を行うギャラリーです。このエリアは近年のバンコクカルチャーの進化と勢いトレンドを肌で感じられる注目スポットなので、バンコクの今を知るにはとてもいいかと思います。

1階は、世界中からセレクトされたアート作品、雑貨、家具、ファッションアイテムが並びます。


続いては、私がお土産購入で一番おすすめしたいところは、アロマショップ「KARMAKAMET・カルマカメット」

香りのお土産として最高な品揃えのお店です。現オーナーの祖父が中国の海南にある漢方薬工場の事業をされていたルーツがあり、途絶えていた歴史を紆余曲折ありながらも、さまざまな香りを家族のオリジナルのレシピから伝統的な香作りのフォーミュラを復活させ純粋なエッセンシャルオイル製品の新しいラインを拡大し香りのキャンドル、香水バッグなどの生産を開始した近年人気のお店です。バンコク市内に数店舗あるのですが、その中でもBTSのプロムポン駅から徒歩数分のPhrom Phong(プロムポン)店がおすすめ。ここは旗地のような敷地なので表通りからほとんどお店の外観は見えてこないのですが、ビルに挟まれた路地を進むと現れる緑に囲まれた一軒家。ビルとビルの狭間の小さなオアシスはそこだけが時空を超えて残されたかのように存在し店内に足を踏み入れる前から胸が高鳴ります。

ビルの狭間の小さなオアシス。期待が膨らみます。

そしてお店の中へ一歩入るとその胸の高まりはさらに大きくなること間違いなしです。クラフトマンシップを体現するかのようなディスプレイ演出が、言葉はなくとも受け継がれてきた歴史、アジア文化の融合、カルマカメットが大切にしている価値観や美への追求がひしひしと伝わってきます。店内はレストラン空間とショップが併設され、レストラン側は天窓の付いたサンルームのように太陽の光が多く取り入れられようにしてありますが、天窓部分はすりガラスになっているので、まわりのビルが垣間見れることもなく世界観が崩れることのないよう配慮されているように感じます。そして、ショップ側は何か怪しげな薬品倉庫に迷い込んだような雰囲気と仄暗さ。香りに誘われ引き込まれてしまう不思議な空間へ。インテリアにはアロマの調合に使用される瓶や趣のある籠、そして照明が天井からぶら下がりカルマカメットの世界観を象徴するような設えと香りに包まれます。仕事で店舗設計のご依頼などもあるのでイマジネーションをかきたてられてワクワクがとまりません。空間にいるだけでもアドレナリンが高められますが、もちろん香りのお土産としても最高な品揃えがあります。「I Love My Life」のコンセプトの下でプロトタイプショップを構築された商品は華やかな香りの奥に深みも感じられます。香りの数は無数にあり、商品のラインナップもルームディフューザー、アロマオイル、アロマキャンドル、ボディケア商品などと多いため、好きな香り探しとどの商品にするかとても悩みますので、もし訪問をしたいと思った方はたっぷりゆっくり時間に余裕をもって訪れることをおすすめします。

木洩れ陽を感じながら食事ができるレストラン側

ショップカウンターの上部にはオブジェの垂れ下がるザル

アロマの調合に使用される瓶や材料が並ぶ、仄暗いショップ側

ちなみに私のおすすめ商品はキーホルダー型の香水バッグ。自宅の鍵に取り付けてお出かけの時もお気に入りの香りがふわっと香ってくる瞬間はとても心地よいものです。お土産として荷物にもならず本当におすすめです。ちなみに、ルームディフューザーも購入したのですが、帰りの飛行機でガラス製品だからと割れることが心配になり機内持ち込みの手荷物に入れてしまった私、皆さんご存知かと思いますが機内に持ち込める液体は100ml以下の容器。うっかりそれを忘れてしまっていたため空港のセキュリティーチェックで没収となってしまいました。涙涙です。皆様もうっかりミスにお気をつけください。

私のおすすめ、キーホルダー型の香水バッグ。
お気に入りの香りはLEAF GRASSとBLOSSOM ORANGE


そして最後にお食事処として1件ご紹介、バンコクには屋台からラグジュアリーホテルのレストランまで多種多様、美味しいお店が無数にありますが、SANKYO WOMANのコラムですので、ここはやはりお庭に関する場所がいいかなと思いますので、資産家ナイラート旧邸宅の敷地を公園にしてその中に佇むタイ料理レストラン「Ma Maison マ・メゾン」です。
庭園にはパーティーにも使用される広い芝生が中心にありそれを囲むように樹木が生い茂っているので、ここもバンコクの都心部とは思えないほどゆったりとした時間の中でお食事を楽しめます。レストランはガラス張りのモダンな建物と開放的なテラス席があり、テラス席では芝生に訪れる野鳥を観察することもできるような自然のなかで美味しいお食事ができますので静かな場所でお食事したい時におすすめです。

街中の喧騒を忘れてしまう広い芝生と樹木に囲まれたナイラート旧邸宅 タイ料理レストラン「Ma Maison マ・メゾン」

今回ご紹介した場所は全てオーナーのこだわりや信念が強く体現された場所です。今までもこれからも永く受け継がれていく場所になるのかなと思います。
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年前と同じようにバンコクはエネルギッシュな人間のエネルギーが剥き出しになっているかのような喧騒もありましたが、喧騒の中にある静けさが保たれた小さなオアシス空間がありました。喧騒と静けさの対比がまたバンコクらしさを感じます。高層ビル建設など都市の発展が続いていますが、らしさを失うことなくいつまでも魅力的な街であり続けてほしい、そしてまた近々行きたいなと思います。


おまけ、前回もおすすめタイマッサージ店をご紹介しましたが、もう1件ご紹介「OASISSPA オアシス スパ」スクンビット31店、ここも都会のオアシス的癒し満載の環境。蓮の池のある庭を囲むリラクゼーションスペースの個室でマッサージをしていただけます。ちょっとラグジュアリーな気分も味わえるそんな空間です。

おすすめマッサージ店「OASIS SPA オアシス スパ」スクンビット31店




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