コラム

column


SANKYO WOMANスペシャルコラム


富田 絵里香(Tomita Erika)

富田 絵里香(Tomita Erika)

  所属先

  AREA 外構&お庭の設計事務所・手描きの図面屋

  保有資格

 ・1級造園施工管理技士
 ・一般社団法人 日本エクステリア設計協会正会員

  庭への想い

  手描き一筋、暮らしと夢のAREAを描き続けます。
  付加価値が感じられる住まいの提案を心がけ、
  住み心地、デザインの満足度を高めていきたい。

  ~主な経歴~

  ハウスメーカーエクステリア部門、外構設計施工会社 15年間勤務を経て独立
  AREA外構&お庭の設計事務所立ち上げ12年目になります。

主な作品
主な作品

【 第14回 】 ミラノデザインウィーク2023 報告❸

連載で書かせていただきました2023年ミラノデザインウィーク報告レポートも今回で最後です。

2024年開催のミラノサローネへ行く計画をしている方は、今ごろ飛行機チケットやホテルの手配をしている頃かと思います。
そんな方々にもコラムを参考にしていただけたら幸いです。

国内でも2023年のサローネで発表された商品を目にすることも増えてきた今日この頃ですが、今回のコラムでは、ミラノサローネ会場内で開催された2年に1度のエウロルーチェ(国際照明見本市) と、ミラノサローネ会場内で印象に残った前回までに紹介できなっかたブランド、日本では未発売のブランドなど。

そして、番外編としてミラノ散歩のお話を書かせていただきます。


まずご紹介するのは、

エウロルーチェで気になったブランドですが、エクステリアでの光の演出は、部屋からの見え方、街並みとしての見え方、安全面に重きを置いておりますが、昨今、ガーデンリビングに注目が集まり提案する機会も増えてきた中で、お庭で食事することを想定したナイトシーンでの提案があります。

ガーデンリビングに関しては必要以上に明るくする必要はないと思うのですが、お食事をするためには、やはり手元とお食事が美味しく見える光の演出が必要かと思います。

そんな中でご紹介したいのがAmbientec(アンビエンテック)です。

Ambientec (アンビエンテック)

日本のブランドで、水中撮影機材をバックグラウンドに持つ高い防水機能を持つポータブル照明ブランド。

コレクションの中には真鍮、ステンレス、アルミニウムブラックなどの素材を切削加工し最高のディテールで展開されるTURN(ターン)やTURN+(ターンプラス)。クリスタルガラスを彫刻的な光のオブジェのようにしたCachalo(カシャロ)や、放射状に広がる幻想的な光が特徴のXtal Gacrux(クリスタル ガクルクス)などスタイリッシュで繊細なフォルム。ミニマルでありながらも空間を上質に感じさせる存在感を放つコレクションのラインナップが揃います。

ポータブルランプだからこそ重要な手触り感ですが、金属の素材感と技術力が凝縮されて肌から伝わり、デザインだけでない奥深さを感じさせ、こだわりの光源によって空間や食卓を温かい光で包み込まれると、暮らしにとって光が生活を豊かにしてくれるアイテムなのだと重要さを再認識します。

従来から人気のミニマルで空間を上質に感じさせる存在感を放つコレクションのラインナップ

そんなAmbientecは今まで日本人デザイナーを起用し続けていましたが、今回のサローネで発表された新作はイタリア出身の建築家でデザイナーのエリーザ・オッシノによる美と機能性を兼ね備えた5色展開のモダンでミニマムなデザインで光源の360度可動する高い防水性能を持つmadcoが発表されていました。

私がまず驚いたことは今までのブランドイメージとは違った印象を持つことでした。

madcoのカラーの展開は、オリーブ色、桃色、カカオ色、からし色、さくらんぼ色の5色。今までの真鍮、ステンレスやブラックの上質で重厚感といった印象と違って、軽やかで可愛らしさを感じます。風光明媚な浮遊感あるスタイルで、空間に顕著な情景性を与える本質的なラインと幾何学形が彼女のデザインの特徴とのことで、どのコレクションもデザイナ一の人々の心や暮らしに寄り添うような灯りの在り方を光に込めた思いが根幹にあり、真摯にデザインに投影されている点は共通しています。

今回、ブランドの印象を大きく変える試みによって、今後の幅広いラインナップ展開の広がりを感じ、益々楽しみで期待せずにはいられなくなりました。

新しいチャレンジを続けながら日本のブランドとして世界に発信しつづける企業として成長し続けられていることに敬意を表します。今後の歩む道を注目していきたいブランドです。

madco
軽やかで可愛らしさを感じる風光明媚な浮遊感あるスタイル


BROKIS(ブロッキス)

チェコの吹きガラスの伝統を継承しつつ都会的でエレガントなエッセンスを加えた照明ブランドですが、日本人デザイナー柴田文江がコラボレーションした日本の伝統文化である祭りで参道を照らす紙製の灯りをインスピレーションとして誕生した、アウトドア用もある雪洞(ぼんぼり)は2021年のエル・デコデザインアワード照明部門グランプリを受賞しているので印象に残っている方も多いかと思いますが、今回も柴田文江とのコラボレーションの竹の森が注目を浴びていました。


柴田文江とのコラボレーションの竹の森


FLOS(フロス)

こちら日本でも人気のFLOSですが、コケを使用した築山と白い城壁のような壁のファサードが目を引きエウロルーチェ会場の中でもかなり集客があったようです。FLOSはアウトドア照明からデスクライト、公共スペースなどあらゆる空間に適した照明を発表していました。光源が移動できるデザインが多く、必要な時だけ壁面からライトバーが伸ばすことができるフレキシブルな利便性を可能にするデザインが注目されていました。

リアルグリーンを利用した展示が人気



続いて、前々回お伝えきれなかったガーデンファニチャーブランドをご紹介したいと思います。

RODA(ロダ)

北イタリアの自然豊かな町、ヴァレーゼに設立したアウトドア家具ブランド。生活空間におけるインドアとアウトドアの境界をなくす「 IN and OUT 」の思想に基づき、人と自然が穏やかに融合する、住まいの新たな心地よさを創造するブランドとのことです。

RODAのコンセプトは、屋外家具を通じて人間と外部環境の間に湧き出る調和の関係と、私たちを取り巻く自然とのバランスを大事しているとのことで、会場のプレゼンテーションも実際に天然素材で作られ、石の床、木造構造、麻の簾のようなもので装飾は会場解体後も完全に回収されるように設計されていました。

発表されていたコレクションはこちらも日本を感じる要素が多く散りばめられていて、地面に近い高さの低いデイベッドは、すのこのような形状のものと組み合わせられています。

石の床、木造構造、麻の簾。
天然素材で作られたプレゼンテーション



ETHIMO(エティモ)

最近世界で注目を浴びているアウトドア家具ブランドのETHIMOは麦わらをつかったプレゼンテーションが、目を引き人気のブースでした。

麦わらをつかったプレゼンテーションで独特な世界観を表現するブース

ミラノ市内にも店舗があり、前回ご紹介したTRIBUの路面店の道を挟んで斜め前に位置する場所にあります。

そこでは家庭用スポーツ家具で庭やテラスに設置できるアウトドアジムといった屋外の使い方がまだまだ無限大と感じるものや、エル・デコ インターナショナルデザインアワード2021やアーキプロダクツデザインアワード2020を受賞したHutがあります。大自然の中で居心地の良い巣の中で快適の巣で自然と調和してリラックスできる空間ができるそうです。

他のブランドにもありましたが、屋根とベッドが一体型になった単体で完結できるアウトドアならではのファニチャーとして今後も増えそうな予感がしますね。

家庭用スポーツ家具で庭やテラスに設置できるアウトドアジム

屋根とベッドが一体型になった単体で完結できる空間の主役になるデイベッドのHut


今回気になったアイテムの一つとしてアウトドアキッチンが多数発表されていましたが、その中でも先ほど紹介したETHIMOでは円柱タイプのシンクタイプとグリルタイプの2タイプそれぞれに蓋となる天板付きで、スライドして横に移動するようになる機能がデザインされた秀逸なアウトドアキッチンが発表されています。

使用するときは開いてテーブルやちょっとした食器の置き場として利用ができ、使用しないときは蓋として汚れが付きにくいスタイルに変化し、収納部も備えたとても実用性、利便性に長けています。

その他のブランドでも、キャスター付きワゴンタイプや、室内と遜色ないシステムキッチン型など多く出展されていました。日本へは蛇口の規格などをクリアしなければ輸入は難しいかもしれませんが、今後、国内でもガーデンリビングの普及に伴って需要も増えてくるアイテムかと思うので国内でも選択技が増えることを期待してしまいます。

蓋となる天板がスライドする機能とデザインが融合した秀逸なアウトドアキッチン

システムキッチン型



最後に番外編のミラノ散歩として滞在最終日の観光と買い物を兼ねて訪れたおすすめスポット場のご紹介。

運河を眺めながら食事が楽しめるオープンカフェレストランが並ぶナヴィリオ運河はミラノらしさを感じる雰囲気を存分に味わえる場所。運河の建設にはレオナルド・ダ・ヴィンチも設計に加わったとのことです。

歴史の深さを感じる昔の洗濯場跡などもあったり、ギャラリーや雑貨屋さんもあり歩いているだけでも楽しいエリアです。 ジブリ映画「紅の豚」の舞台とも言われ、地元ミラノの人々、観光客など様々な人が集まる人気スポットでした。

オープンカフェレストランが並ぶナヴィリオ運河

アトリエやギャラリーが並ぶ素敵な場所もあります。

昔の洗濯場。石の洗濯板が並んでいます。

そしてもう一つご紹介したいコルソ・コモはセレクトショップやカフェ、ギャラリーが併設された場所。可愛らしくおしゃれなファアサードは、エントランスに人々が吸い込まれるように中へと誘われていきます。中へ入ると植物に囲まれたレストランがあり、より一層胸の高まりを感じます。

ここでおすすめなのが屋上。ガーデンファニチャーが置かれ、隣接するイタリアを感じる黄色の外壁の建物や窓辺に置かれた植物。美しい家々はミラノ生活の一端を覗き見た気分になれます。イタリアの街並みは通りに面して歩道の際まで建物を建てられていることが多いので、街を歩いているだけでは一見分からないけれど一歩中に入ると想像もつかない空間が広がる場所が沢山あります。そんな場所を見つけた時の喜びもミラノ散歩の醍醐味でした。

ディエチ・コルソ・コモのファサードエントランス

屋上・歴史を感じる建築の後ろに聳え立つ近代的な再開発地区のビル



長期に渡り3回連載として書かせていただいたコラムですが、皆様に少しでも現地の興奮が伝わるといいなと思います。

現在世界はグローバル化によって家に居ながらも情報は沢山得ることができますが、あえてその現地に行く意味として、やはり現地に行かなければわからない五感で感じることや、手触りや質感、細部のディティールを目にする感じることができることでしょうか。

SNSなどで情報を得ようとする場合、無意識のうちに自分の好みのものばかりを検索してしまいがちではないでしょうか。そういった点でも現地に行くことで好みに関わらず情報は入ってきますので自分の知識の情報として蓄えることができます。そして、国内の展示会もそうですが、実物を見たものはお客様に自信を持ってお勧めができますよね。逆にあまり良くなかったところも目にすることができお客様への説明も説得力が増してくるかと思います。

グローバル化した世界のデザインはある意味統一化されてきている感もある中で、日本を感じるデザイン要素はある意味特徴を持ってリスペクトさえているなと感じる場面が多くあったことに嬉しくあるとともに、今後自分たちも誇りを持って守り進化していけるように提案の中にも組み込んでいけたらと思いました。

来年2025年のミラノサローネへは再訪できるように現在計画中です。読んでくれた皆様とも現地でお会いできたら幸いです。チャオー!


  バックナンバー

【第12回】ミラノデザインウィーク2023 報告❶ 渡航前の準備とミラノサローネ会場出展のガーデンファニチャーブランドの紹介