コラム
column
所属先
AREA 外構&お庭の設計事務所・手描きの図面屋
保有資格
・1級造園施工管理技士
・一般社団法人 日本エクステリア設計協会正会員
庭への想い
手描き一筋、暮らしと夢のAREAを描き続けます。
付加価値が感じられる住まいの提案を心がけ、
住み心地、デザインの満足度を高めていきたい。
~主な経歴~
ハウスメーカーエクステリア部門、外構設計施工会社 15年間勤務を経て独立
AREA外構&お庭の設計事務所立ち上げ12年目になります。
こちらのコラムにて度々海外渡航時のおはなしを書いており、ほとんど旅ブログのようになっていますが、今回もタイのバンコクに行ってまいりましたので、最近のバンコク建築情報や、癒しスポットなどをご紹介させていただきたいと思います。
私がタイに渡航するのは10回目くらいなんです。何度も行きたくなる大好きな国なのですが、最近は行くタイミングがなく今回はかなり久しぶりの渡航です。
久しぶりの渡航のきっかけは、最近バンコクにレジデンスを購入した方からコロナ明けのバンコクが凄いぞ!と熱弁をうけまして、何がそんなに凄いのか?確かめたい。
居ても立っても居られない ”タイに行きたい熱” が沸騰し急遽旅の計画をいたしました。今回は建築、デザインを中心にしつつ、癒しのマッサージやおすすめレストランやショップ情報もお伝えできればと思います。
まずは今回の旅のお話をする前に、20年前に度々渡航していたころの私は30代。
そのころの旅スタイルなんですが、格安航空券を使用し現地に到着してから安宿を探す。何をするか、どこへ行くかも現地に行ってからきめるバックパッカーのようなスタイルでした。そのころ憧れていた沢木耕太郎の小説「深夜特急」のような感覚を、感じたい真似てみたいといった気持ちがありました。私がよく利用した格安航空券は有効期限14日間の航空券で、往路の出発日から復路の出発日までを14日の間に収めて往復利用する航空券です。その頃はLCCは無かったのでフルキャリアサービスの航空会社から選択し往復3万円くらいだったかと覚えています。LCCを使用すれば現代でも可能な価格かもしれません。
旅の拠点を毎回バンコクにし、そこから乗合バスで10時間以上かけて南へ行ったり北へ行ったりとしました。南下した際はマレーシア国境近くまでバスで行き、国境越えは徒歩や小型のボートのようなものでした。基本的に宿泊は安宿なのでお世辞にも綺麗とは言えない(詳細は割愛)ところもありました。さまざまな虫がいるのですが、蚊も非常に多いので虫除けスプレーは必須。途中で蚊帳を買って安宿に設置したことも思い出のひとつです。マレーシアの小さな島へ行ったときには、散歩中にオオトカゲと出会ってしまったなんてこともありました。
女性には多少ハードではありましたが、他にやっている人が少ないことをできていることが喜びでもあり良い思い出です。いまの私にはもうあんな旅をするバイタリティ、対応できる耐性が無くなってしまったのでできません。若い時に行っておいて良かったとつくづく思う今日この頃です。
あの頃はスマホなど勿論なく、かろうじて携帯電話はあるけれど海外での使用は通話料金が高額になることが怖くて公衆電話で日本に電話をした記憶があります。地球の歩き方とイラスト付きの指差し会話帳の2冊の本が私の命綱。今思うとGoogle マップも使えない、乗り換え案内もできないなかでよく行けたなと自分の事ながら感心してしまいます。何度もタイへ渡航している私の姿をみた友人から、なぜそんなにタイが好きなのかと聞かれることがありました。私もなぜだろう?とは思うのですが、まずは直感的に肌に合う感覚。理屈ではない部分があります。もう一つは日本の昭和を思い出すような幼少期に感じていたものが残っているように思え、ノスタルジックな気持ちになれることでしょうか。雑多な街、人が多く活気はあるけれどのんびりともしているようにも感じました。
そして、当時、私は日本で住宅メーカー系のエクステリア会社でサラリーガールをしていたのですが、先輩の女性方はほとんどが30歳手前で結婚、もしくは妊娠を期に退職されているなかで、自分自身の進む道の指針となる姿が見えない不安、自分はどう進むべきなのか悩み、日々の暮らしに苦しさを感じていました。そんな状況から解放されたい逃げたいと思う気持ちをバンコクのうるさいほどの車のクラクションの音や雑踏が一瞬だけでも忘れさせてくれていました。それでいてバンコクの街中を一歩出ると、さっきまでの喧騒が嘘かのようなのんびりとした人々の暮らしに触れることができ、心穏やかになりました。その他、様々なことで日本で過ごす日常とのギャップにカルチャーショックを受け、日本で当たり前だと思っていることが世界共通ではないことを実感したし、日本の恵まれている生活が窮屈に感じている自分自身の思いは何なのか、その時の旅によってその頃の悩みに答えは出なかったけれど、あの時間があったからこそ今もこうして楽しく仕事に向き合えている大切な時間だったんだなと、今振り返ってみると改めて感じています。
そんな思いで渡航していたころから20年ほど経ち、自分自身の年齢、ライフスタイル、心境に変化がありますが、バンコクはどれだけ変貌しているのだろうか、変わっていないところはあるのか。それを今の自分がどんなふうに感じるのか確認したいそんな旅でもあります。
はなしが少しそれてしまいましたが、ここからが本題。旅ログ風にお伝えできたらと思います。
今回は3泊5日のスケジュール、羽田から午前中発、バンコクに夕方到着便を選択(夜中発、朝着便などもあります)。
バンコクのスワンナプーム空港はバンコク市内へのアクセスは高速鉄道AIRPORT RAIL LINK(ARL)もしくはタクシーで30~50分程度です。バンコク市内は時間によって渋滞がひどいので夕刻などは1時間かかると思っておいてください。ARLは深夜24時発が最終のようです。今回は午前発・夕方着の飛行機にしました。フライトは6~7時間、時差は2時間。
宿泊のホテルは、2017年に開業した地上314メートル、タイで最も高いビルで虫食いされたように見える印象的なフォルムが崩れかかったビルと呼ばれるマハナコーンタワー内にある「The Standard, Bangkok」です。
ホテル「The Standard, Bangkok」が入る、虫食いされたように見える印象的なフォルムが崩れかかったビルと呼ばれるマハナコーンタワー
このホテルのデザインがとても素敵でした!
スタンダードと名乗りながらも全然スタンダードじゃない、タイの伝統文化とアメリカンレトロポップのようなバービー人形の世界観とが融合したデザイン空間なんです。スペインのアーティスト兼デザイナーJaime Hayon氏とThe Standardの受賞歴あるデザインチームが、バンコクの文化のるつぼと自由形式の芸術的探究の相乗効果を掘り下げて作り上げた空間は今までに経験したことがない非日常体験ができます。世界的に70、80年代をオマージュしたテーマに注目が集まっていますが、日本も昭和ブームなんて言葉をききますけど、デザインは勿論ですが、そのころの人と人との繋がりの近さに憧れや懐かしさがあるのかと感じます。このホテルはそんな時代をブラッシュアップして表現されている空間が多くあります。数件あるレストランもそれぞれこだわりの強い内装デザイン、ポップなデザインアートで彩られ気分を高揚させてくれます。バーが併設したプールもあり高層ビルに囲まれた都会のリゾートを楽しめました。
エントランスにはタイの伝統的な工芸技術を活かしたデザイン性の高いラタンで編まれたペンダントライトが吹き抜けの空間を印象的にゲストを迎えてくれます。
お部屋もデザイン性が高く、お風呂やクローゼットなども角は丸くするデザインが特長です。
朝食をいただくレストランも個性的な空間が広がります。
朝食はカラフルなガーデンファニチャーが置かれたテラスでも頂くことができます。蒸し暑さはありますが、外の空気に触れながら頂く朝食は格別です。
朝食はアラカルトメニュー(アメリカンブレックファーストからタイ料理、デザートとさまざま)
好きなものをチョイスするシステム。何皿でも頼んで良いらしく、友人とシェアをしつつ美味しく完食。旅の楽しみって食事でかなり左右されてしまう私です。
フロント
個性的なデザインが詰め込まれ、パーティー空間としても使用されるようで、土曜日の夜にはレインボープライドパーティーが開催されていました。
プールサイドのステップデザイン、蹴上の形状にもこだわりを感じます。インテリアのポップさに相対したシンプルさが際立つメリハリ
マハナコーンタワーには東南アジアで最も高い場所にあるルーフトップバー「SKY Beach」があるスカイウォークには1階の入り口で入場チケット1枚880バーツ(約3,500円(インバウンド向けの施設は料金が高めなのかと感じた私です)を購入する必要があるのですが、ホテル宿泊者には無料でチケットがいただけるサービスがつきます。飛行機は全くこわくないのですが若干高所恐怖症なので足が竦みドキドキです。床がガラス張りのエリアもあるのですが考えただけでも私には無理でした。
ホテルに到着したのは17:30、まずは旅の疲れをとるためにタイ古式マッサージへ。
以前の安宿旅をしていた頃は街中の激安店を探すところですが、今の私は少し綺麗めのマッサージ店へ。ホテルから徒歩10分ほどの「HEALTH LAND・ヘルスランド」を利用。このお店、白亜の一軒家まるごとマッサージ店なので一見お高そうにも見えますが、伝統的なタイ式マッサージなら2時間650バーツ(約2,600円)です。日本と比べるとびっくりするくらいリーズナブルに施術を受けられます。バンコク市内に支店も多くある有名店なので、街中のマッサージ屋さんでは不安な人におすすめです。HPから事前予約もできるので、日本出発前に予約しました。
マッサージ後はディナーへ、初日はやっぱりタイ料理からはじめましょうということで、ホテル近くのタイ料理店「THE HOUSE ONSATHORN」へ。
ここの建物がとても素敵で歴史もあり、1889年に元サトーン卿の邸宅として建てられたのち、高級ホテル、元ロシア大使館に利用され、現在はレストランとバーの空間を持ち合わせたスタイルで運営されています。私達は四方を建物に囲まれた中庭の空間へ。植物も多く植え込まれガーデンファニチャーで寛ぎながらのお食事は最高です。少し蒸し暑さもありますが、大きな扇風機が設置されていたのでそれなりに快適です。ここで気がついたことなのですが、扇風機の風によって虫も飛ばされてしまうようなのです。ガーデンリビングなどの提案の際にお客様から虫除けに関して質問された際は、今後は扇風機の設置もお勧めしようと思いました。こちらのお店には、室内に格式の高そうなバーが併設されています。次回の旅でまた訪れたいと思うお店。おすすめです。
1889年に元サトーン卿の邸宅として建てられたタイ料理が頂けるレストラン「THE HOUSE ON SATHORN」
四方建物に囲まれた緑豊かな中庭空間がおすすめです。
2日目、建築探訪スタートです。はじめに向かった先は、一番行きたかった場所でもあるシンドーンケンピンスキーホテルバンコク。
隣接するルンピニー公園の一部かのように緑豊かな庭園の一部にあるような立地にあります。建物は大きく湾曲したフォルムと建物中層階に浮かぶメタリックのオブジェのように配されたプール。
大きく湾曲したフォルムと建物中層階に浮かぶメタリックのオブジェのように配されたプール
一目見て五感を刺激される外観とともに、ロビーラウンジの大きな口を開けた洞窟の入り口のようなコンクリートで作られた半円形のプロポーションの開口部に圧倒されます。反対側にも同じフォルムの開口部があり、その間の空間がロビーラウンジです。半円形のフレームが緑豊かな庭園が額縁庭園のように縁取られ、ラウンジの借景としての役割があり洞窟の暗さの中から外部空間の明るい空を見上げるような幻想的な感覚が表現されているように感じます。
ガラスに縁が設けられていない為、ひとつの大きな洞窟のような空間に感じられます。
ロビーラウンジ内
洞窟にぽっかりと穴が空いたような天窓。上部には客室がある空間の吹き抜けがあります。
ロビーラウンジ内
タイの伝統文化をアレンジした家具などのデザイン
半円形のフレームが緑豊かな庭園を額縁庭園のように切り取り、ラウンジの借景としの役割を果たしています。
庭側からロビーラウンジ側への眺め
このホテルはポリシーとして、環境保全と持続可能性、省資源と持続可能なデザインを紹介しています。建設には、地域の在来の植物を維持するために元の場所から古い成長した木を保全し、植え替え、屋外テラスの緑豊かな造園は、ホテルとその敷地の魅力を高めるだけでなく、バンコク中心部の環境に優しい環境を促進するのにも役立つようにと考えられたそうです。
ケンピンスキーはドイツで誕生し現在はスイスのジュネーブに本部を置くホテル運営会社です。日本ではあまり馴染みがない方が多いかもしれませんが世界30カ国で80軒以上の高級ホテルを運営しています。友人がインドネシアのバリのケンピンスキーに宿泊したことがあるそうなのですが、インド洋を望む崖の上に建物があり、随所にインドネシアの様々な文化を取り入れて王朝時代の芸術を象徴する装飾が美しいラグジュアリーなリゾートを体感することができるそうです。話を聞いただけで行きたくなりますね。
近年、ラグジュアリーホテルはそれぞれの国の特色を活かした唯一無二のデザイン、そしてホスピタリティを理念として体現されているので、旅先では宿泊はしなくとも、朝食やカフェの利用をしつつ足を運ぶようにしています。
今回のコラムは、20年前の旅スタイルとその頃の思いから始まり、先日行ってきたバンコクの序盤を旅ログ風に振り返りました。次回以降も続けてバンコク建築探訪のお話しやおすすめのギャラリー兼ショップ、おすすめのお土産スポットなどお伝えしたいと思います。お待ちくださいませ。
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