コラム

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SANKYO WOMANスペシャルコラム


富田 絵里香(Tomita Erika)

富田 絵里香(Tomita Erika)

  所属先

  AREA 外構&お庭の設計事務所・手描きの図面屋

  保有資格

 ・1級造園施工管理技士
 ・一般社団法人 日本エクステリア設計協会正会員

  庭への想い

  手描き一筋、暮らしと夢のAREAを描き続けます。
  付加価値が感じられる住まいの提案を心がけ、
  住み心地、デザインの満足度を高めていきたい。

  ~主な経歴~

  ハウスメーカーエクステリア部門、外構設計施工会社 15年間勤務を経て独立
  AREA外構&お庭の設計事務所立ち上げ12年目になります。

主な作品
主な作品

【 第8回 】 「私の自宅バルコニーガーデン」の問題点と対策方法、おすすめ植物のお話。

皆様こんにちは。

昨年4月のコロナ禍による緊急事態宣言から1年が経ちましたね。出が減り家にいる時間が増えた人がほとんどかと思いますが、その際に家に植物があることで和みや癒し、幸せを感じることを実感した人も少なくなかったかと思います。私自身、この1年間の生活の中で今まで以上に植物の必要性を体感する日々でした。

私自身はマンション暮らしをしているので植物の育成場所はバルコニーがメイン。本格的にバルコニーガーデンをはじめたのは15年ほど前からです。今回はバルコニーで植物を育てるコツや大変さetc…私自身の個人的実体験やおすすめ植物なども交えてご紹介いたします。

その前に。私はエクステリア&ガーデン業界の仕事をはじめてから約30年と長いキャリアになろうかとしているところですが、仕事をはじめた当初はそれまでお庭のある家に住む事がなかったせいか、庭木を自分で育てたことが一度もなく、たまに可愛いと思って買った鉢植えの植物は枯らしてばかり。正直言うと植物を育てる事に苦手意識がありました。そして、仕事をしながら徐々に植物のことを勉強し造園施工管理技士の資格も取得したのですが、その後も自分で植物を育てた事がほとんどないまま10年間以上も過ぎてしまい、引け目を感じる日々。やはりこのままでは駄目だと感じ、勉強の意味もありスタートしたバルコニーガーデンでした。

現在の住居であるマンションはちょっと特殊な間取りで半地下のリビングに接する南向きバルコニー。一般的なバルコニーとは違う点も多くありますが、バルコニーあるあるの苦労点を交えて解説させていただきます。

自宅バルコニー環境


  ・バルコニーは意外と日陰が多い。高層階は風が強い。

植物を置きたい場所としては、室内から見ることを考えるとフォーカルポイントになるのは窓正面の壁面前。しかし、太陽の高度が低い冬場などは部屋に日差しは入るけれど、壁面前は影が出やすくなる場所。そして上階のバルコニーの影も出てきます。一般的な集合住宅のバルコニー形状だと日当たりのいい場所は手すりから上部1m程度です。太陽の光が大好きな植物はその部分に葉が茂るように配置。ちなみに、以前居住していた高層階のバルコニーでは風速も強いことでも苦労しました。根が浅いものや枝に柔軟性のない植物は避けたほうがいいですね。(近年人気のユーカリ、ミモザ、フェイジョアなども根が浅い。)しかし、バルコニーの場合は基本的に鉢植えで育てるので、風が強い日には室内に取り込めるスペースを確保できれば問題なしです。

日陰対策としては、台座的な高さのある棚などを利用して植物に陽が当たるように配置することですが、私の場合は棚を置くスペースがなく、ちょうど良い場所に大きな室外機があるため、苦肉の策として室外機にカバーを設置し、そしてその上に大きめのウッドボックスを置き鉢植えを入れ込むことでボーダーガーデンの様に見せる演出です。(室外機の上に置くことはおすすめしていません。良いこはマネしないでください!)それでもやっぱり太陽が大好きな子達には日照時間が足りないので、日差しのある場所に鉢植えを移動させて日向ぼっこをさせてあげたり。背の高い植物の影にもなり易い手前側に配置する植物は、耐陰性のある垂れ下がるタイプの蔓性を中心に配置しています。その際には、ゴールド系やシルバー系、斑入りなどカラーリーフの常緑樹を多様することで影になる暗さを感じさせない見た目の明るさ華やかさを通年確保することができるように意識しています。

[冬~早春花壇の様子]

手前は垂れ下がる耐陰性のあるセイヨウイワナンテンを中心に、花のない時期も華やかな印象になるようにカラーリーフプランツを多用しています。色、形、高さを意識して立体的に配置バランスを考えて配置。

「鉢の部分は見えないように。劇場型に手前と奥の高さを強調できるように演出。」

「日照時間の短い冬場は日当たりの良い部屋側に鉢植えを移動して日向ぼっこをさせてあげます。」

[出来るだけ植物に陽が当たるように考えた苦肉の策]

  ・室外機の温風は大敵。人間でも嫌なことは植物も嫌い。

私は室外機を棚のように利用しています。(温風が当たる場所には植物を置くことはNG)
室外機自体も熱くなるので、室外機カバーの上に大きめのウッドボックスを置き、上げ底にすることで空気層を作り出し、鉢植えに熱が伝わりづらいようにしています。
ウッドボックス中に、その時期綺麗に見える鉢植えを数種類組み合わせて入れ込み配置しています。

[夏花壇の様子]

鉢植えを組み合わせているからこそできる、季節ごとに雰囲気を変えて植物を構成する演出。
コンクリートで囲まれた空間なので、夏場はとても暑くなります。耐暑性と乾燥に強い植物を選ぶことも重要ポイントです。酷暑にも耐える多肉のアガベや、カンナなど太陽の光に似合うアイコニックな造形の植栽でメリハリをつけ、ガーデンファニチャー、ファブリック、キャンドルで光の演出を設て、夏の夜は夕涼み空間にしています。


「ストレリチア」

「寒暖差に、乾燥に強いアガベ」

「銅葉と黄色みの強いカンナ2種」

  ・室内のインテリアを意識してコーディネート。

居室に接しているバルコニーはインテリア的要素も必要。居室のインテリアデザインを意識して、モダン、カントリー、和風など、とそれぞれの室内環境に合わせて設る。

[冬~春・おすすめオージープランツ]

地植えでは難しい湿度に弱いオージープランツ類も、軒下があるバルコニーだからこそ鉢植えで楽しめる植物もあります。

「バーゼリア大玉タイプ小玉タイプ」

蕾状態が冬場ながく続きます。ちょっと変わった感じで可愛らしく、お花のようにアクセントになります。

「グレビレア」

花の少ない冬場も次々と花を咲かせます。

「エレモフィア」

シルバーリーフが空間にメリハリと明るさを。

「セイヨウイワナンテンのカラー別に数種類」

「定番の斑入りアイビーとアスパラ」

「ビバーナム ティヌス」

花付きの良い小花の集合、冬場も蕾の時期がながく可愛い表情
秋にはコバルトブルーの実がなり、切り花としても重宝しています。


  ・お隣さんへの配慮。バルコニーでは植物は健やかに育ってもらいたいけれど、大きくなり過ぎも困る。

ルーフバルコニーのような広い空間なら別ですが、殆どの場合が限られた狭い空間。そして集合住宅になるとお隣さんが壁一枚で繋がった空間です。ご近所さんの迷惑にならないように育てることは必須マナー。隣地に越境しないようにとの意味合いもありますが、限られた狭い空間の中でなるべく多くの植物を楽しみたいですよね。一つの植物が占領しないようにこまめに剪定することや比較的生育の遅い樹種を選ぶことも大切です。生育旺盛な植物はあえて鉢替えをしないまま盆栽のような要領で小さな鉢で育て続けることもコツです。

  ・極力メンテナンスフリーで楽しむ。

お庭と違って落ち葉が土にかえる循環は期待できないし、排水溝へは落ち葉が極力流れ込まない様にしたいので、私は常緑樹を8~9割メインで構成しています。そして、排水溝への流入を防ぐ策としてザルを被せています。室内と密接していますので清潔感も大切です。ガシガシと水洗いができる床材がおすすめです。(砂利を敷くと汚れが貯まりやすく洗浄が面倒です)

「カシワバアジサイ」(落葉樹)

地植えをするとグングン育ち花つきも良いことが取り柄ですが、バルコニーではあまり大きく育つのは困りもの。鉢替えをせず、コンパクトに育てます。花房が2~3だけでも華やかな印象です。

「オリーブ」

実付きが良くなるように2品種育てています。毎年たくさんの実を収穫できるので塩漬けもできますよ。

「ユーカリ・ポポラス」

こちらも地植えをするとグングン育ちますが、剪定をこまめにすることで、大きさを調整。

[自宅の植物でリース作成]

バルコニーで育てた植物利用して、材料費は殆ど0円で(ワイヤー代のみ)リース作成も可能です。
春の訪れを知らせてくれるミモザ、2月下旬になると街中でミモザリースを街でよく見かけますね。しかし、ミモザをバルコニーで育てるとなると、高さも幅も生育旺盛。。。不向きと諦めている方が多いかと思いますが、コンパクトな矮性品種のテレサなら狭い場所でも栽培可能です。
リースの材料はミモザの黄色とシルバーリーフのユーカリグニーが相性抜群!
台座の輪っか部分は、冬場に落葉したヘンリーヅタのツルの部分をカットし、輪っかにして乾燥させて保管していたものを使用しています。

「オリーブグニー」

ミモザと相性の良いブルー系シルバーリーフ。

「アカシア・テレサ」

ミモザのコンパクトな矮性品種。


「ヘンリーヅタ」

紅葉が綺麗な育ちすぎて困るほど発育旺盛な落葉樹。
落葉時に剪定したツルの部分をリースの台座に使用。


  ・育てる。愛でる。活用する。

育てる楽しさ、愛でる楽しさ。活用する楽しさを体験できるバルコニーガーデン。
是非、みなさんもチャレンジしてください


※今回、バルコニーで言葉を統一していますが正式には、

バルコニーは屋根が無い場所、ベランダは屋根(上階の屋根含む)がある場所、1階住戸など、コンクリートやタイルを敷き詰めた場所はテラスです。

※集合住宅のバルコニー、ベランダ、テラスは共用部分です。避難経路や各管理規約を確認の上ご使用ください。


お知らせ

富田先生が所属されている日本女子会「にわとわに」でバルコニーガーデンについて動画配信されています。

コラムでは触れられていない話もありますので、是非ご覧ください!



質問コーナー

第8回コラムにお寄せいただいた質問をご紹介いたします。

Q1.「鉢植えは劇場型に配置」とは、高低差をつけるということでしょうか。カーブを描くように並べることも含まれるのでしょうか。 

[出来るだけ植物に陽が当たるように考えた苦肉の策]

  ・室外機の温風は大敵。人間でも嫌なことは植物も嫌い。

私は室外機を棚のように利用しています。(温風が当たる場所には植物を置くことはNG)
室外機自体も熱くなるので、室外機カバーの上に大きめのウッドボックスを置き、上げ底にすることで空気層を作り出し、鉢植えに熱が伝わりづらいようにしています。
ウッドボックス中に、その時期綺麗に見える鉢植えを数種類組み合わせて入れ込み配置しています。


A1.

これは私自身が皆さんに分かりやすく思い浮かべて貰えればと思い、劇場を例えて用いたものですので、正式にある方式ではありません。 質問内の高低差、カーブに関してはどちらも当てはまるかと思います。

高低差の方は、劇場(座席側)のように階段状にし、全ての植栽の顔が見えるように配置するといった意味があったり、植栽の据える高さを、前後で高低差(コラム内の断面図参照)をつけるだけでなく、後方部の植栽の並びは、それぞれの樹種の特徴が良く見えるようにと個々で高さを調整しています。高さの配置は、正面から見て中央を高くして山型に配置したり、どちらか片側を高くし段々と低くなるように配置したりと、見せ方は沢山あります。

カーブ状(空間間を囲うよう)にしているのは、狭い空間を有効に使用するために中央は空け、両端は前に飛び出させつつ徐々に低くなるように植栽を配置しています。空間の機能は損なわないようにしつつも。両側から迫り出す植栽があることで、立体感、迫力が生まれると思います。とは言え、一番重要なのは、植物それぞれの適正の日照時間や湿度がありますの、見た目だけではなく適正な場所に植物は置いてあげてください。

劇場に例えた理由としてもう一つ、舞台上で見せたい部分と裏方は見せたくない部分があるように、植栽と寄せ鉢を入れ込んだボックスは見せるけど、寄せ鉢の部分は見せないといった意味もあります。

Q2.劇場型の他にも並べ方があれば教えていただけますでしょうか。

A2.

前述したように、劇場型は私の創り出した造語のようなものです。
みなさまもご存知かな?と思いますが、地植えの空間で用いられる正式な方式として、イングリッシュガーデンの代表的スタイル、ボーダーガーデンがあります。
植物の高さを生かし背の高いものから低いものへと高低差をつけて帯状に植えていく方式です。

ガーデンの方式としてはボーダーガーデン以外にもコテージ(田舎風)ガーデンやインフォーマルガーデン(自然の景色のような庭)、自然石を段差を生かして植栽を植え込むロックガーデン、最近人気の多肉植物やオージープランツを多く用いたドライガーデン。果樹やハーブなどの食べることができる植栽を多用したエディブルガーデン…etc、沢山のガーデン方式があり植栽の並べ方も多種多様、それぞれの特徴を知っておくと今後のお仕事にも役立つかと思います。