コラム
column
所属先
AREA 外構&お庭の設計事務所・手描きの図面屋
保有資格
・1級造園施工管理技士
・一般社団法人 日本エクステリア設計協会正会員
庭への想い
手描き一筋、暮らしと夢のAREAを描き続けます。
付加価値が感じられる住まいの提案を心がけ、
住み心地、デザインの満足度を高めていきたい。
~主な経歴~
ハウスメーカーエクステリア部門、外構設計施工会社 15年間勤務を経て独立
AREA外構&お庭の設計事務所立ち上げ12年目になります。
前回に続き、ミラノデザインウィーク訪問の報告をさせていただきますが、今回は市内で開催されるフォーリサローネで印象に残ったガーデンファニチャーブランドを中心に紹介します。
フォーリサローネでは、ガーデンファニチャーの本領発揮をできる中庭やイタリアならではの建物を利用したプレゼンテーションは圧巻です。
皆さんに、私が感じた空気感と感動をお伝えしたい思いです。
DEDON(デドン)
まずはドイツの屋外家具ブランドであるDEDONです。市内にある3000㎡という広大な中庭でのプレゼンテーションが行われていました。スピリット オブ デザインをテーマに、自然にインスパイアされた会場は、完璧なディテールと有機的なフォルム通して、DEDON のデザインの物語を語る秘密の花園をテーマに展示されていました。
入口を潜るとアイコニックなデザインで人気のネストレスト。その先に広がる中庭には既存の樹木から吊り下げられたスイングレストがお出迎え。定番とも言えるこの二つのコレクションの演出が一瞬にしてDEDONの世界に引き込まれます。
以前から定評のある高品質でアイコンとなる多彩な色の組み合わせが特徴のDEDONファイバーですが、さらに史上初という見る角度によって色が変わる特殊な技術を加えた作品も登場。自然界の景色のように陽の当たる方向や置く場所によって、見る角度によってまったく異なる表情です。
外壁にラッピングをしたようなファサードが素敵
入口をくぐり抜けると迎えてくれるアイコンのネストレスト
広大な中庭を生かした既存樹木につる下げたスイングレスト
2023年新作としてはDEDON初期のアイコン商品のデイドリームを爽やかなシトリンとジンジャーの新たな組合せで復活させ、原点回帰としたフォルム。ソファとしてもデイベッドとしても使用可能です。コロナ禍を経て、「空想の旅」「夢の旅」がテーマだそうです。柔らかで有機的な曲線で構成されたフォルムは見るだけでも心地よく、身を沈め寛ぐとまさに夢心地、心の解放を誘ってくれそうな夢の世界が広がりそうです。
新色のシトリンとジンジャーで発表された復刻版デイドリーム
今回は自然界の動植物をモチーフにした新作も多く、蝶の羽をイメージした新作チェアやお花がモチーフの照明などより自然界に寄り添いながらもスパイス的な存在になりそうな提案が詰まっていました。今回は個性的な新作が多く見受けられましたので、宿泊施設やレストランなどの商業施設での展開が今後も増えてきそうな予感がします。
蝶の羽がモチーフ
ウェルカムドリンクをいただきながらファニチャーを体感
建物に囲まれた中庭。建築に負けないファニチャーのデザイン
日本でもこんな素敵なファニチャーに出会えたらいいなと期待してしまいます。
Paola Lenti(パオラ レンティ)
ミラノで新しくオープン予定のフラッグシップストアでプレビューイベントを開催していたPaola Lentiは、グラフィック・デザイナーだったパオラ・レンティが1994年にイタリアで自身の名前を冠したブランドを立ち上げ、「色の魔術師」と称され、洗練されたデザインが高い評価を受けているブランドです。
とても親日家のようで日本へのリスペクトが多く感じられるコレクションや設えも多く見受けられます。お茶会をイメージした長椅子と傘はお花見を連想させるシチュエーション、桜や抹茶を連想させる色づかいなど日本的な要素はあるものの、色使いやコーディネートによってこれだけ印象が変わるのかと再認識できます。
お茶会を想像させる長椅子と傘(パラソル)
日本をリスペクトされたデザインが沢山
各エリアごとに、そのまま提案できるような空間全体でプレゼンテーションされているので、ファニチャーはもちろんのこと小物や雑貨、ファブリックのコーディネートなどもとても参考になる真似をしていきたいと思えるシーンが豊富にあり、日本では色が強すぎて提案しずらいなどの言葉を聞くこともありますが、色があるからこそ家具を置くだけでその空間を華やかにドラマティックに演出することができるポイント使いとしても有効なアイテムとも言えるかと思います。
空間のスパイスとなりそうなテーブル
ワクワクさせるデザインと演出
ミラノ市内のパオラレンティのファニチャーが置かれたレストラン。出幅の短いテラスもカラーがアクセントとなり華やかな印象の空間に。
秀逸なデザインとディティールに溢れた空間、色の刺激もあったせいか、今回のミラノで訪問したブランドの中でも一番ワクワクした会場でした。
Talenti (タレンティ)
イタリアを代表する屋外家具ブランド。2004年伝統的な技術を使った石のテーブルのトップメーカーとして創業し独自の研究と開発。伝統を大切にしながらもエレガントなフォルムと細部に施されたフィニッシングが特徴です。
Talenti はミラノサローネ会場でも出展していましたが、フォーリサローネでもプライベートパーティが開催され、敷地の広さを活かし数々のコレクションをシチュエーション別に展開していました。
アプローチのある前庭は、エレガントで大人のカジュアルを感じるコレクションを用いて、自然環境の中で過ごす心地よさが感じられ。そこから室内へと進むとサックスと生歌でモダンジャズが流れる演出。
アプローチもTalentiが迎えてくれます。
前庭はエレガントな大人のカジュアルを連想させる空間
モダンジャズが流れる空間
その空間はベージュ色がメインでシックな品のあるラグジュアリーなコレクションが展開され、さらに奥へ進むとフレスコ画が描かれたイタリアならでは圧巻のドーム型の天井空間が現れ、そこでは、それに負けない重厚感のある大きなモジュールのソファを中心に構成され、日本的な朱色の紅葉をディスプレイに使用したりと、あえて異文化同士を合わせる演出の面白さがありました。
シックで品のあるラグジュアリーなコレクション。全て屋外用です。
フレスコ画に負けない印象のファニチャー
紅葉や朱塗りを連想させるサイドテーブルなど日本的な設え
そしてまた先へと進むと回廊に囲まれた中庭が現れ、枝垂れた大きな樹木がシンボルツリーとなり、弦楽器のアンサンブルでパーティーのメイン会場の様相でポップな色味のファニチャーが配されたりと気分が高揚されてしまいます。
最奥に現れた回廊に囲まれた中庭
入口から中庭まで空間毎に違った印象の空間が出現し吸い込まれていきます。アウトドア空間を楽しむことにとって大切なのはファニチャーだけではなく、自然環境、食事や音楽など複合的に様々な要素が融合して成り立つことが実証されているような素敵な演出で、ゲストを招くホスピタリティの重要性も勉強になりました。
TRIBU(トリビュ)
ベルギーのアウトドアブランドTRIBUは、ミラノ大聖堂から徒歩5~10分ほどの位置にある家具のトップブランドの路面店が集まるサンバヴィラ地区に恒久的なスペースとしてショールーム展開する予定の場所で新しいラグジュアリーコレクションの発表をしていました。
トレンドでもある快適さとサスティナビリティの融合、天然素材のチーク、天然麻を混合して編んだCANAXファイバー素材の組み合わせ。そして伝統的な技術と高性能素材と現代技術を兼ね備えたニットと手かぎ針編みの照明は独創的なデザインでアウトドアとは思えないインテリア性を感じることができます。
店内は香りにもこだわりを持ち、太陽の光を再現した照明で室内にいながらも屋外に置いてあるかのような錯覚を感じせるこだわり。エレガントな独自開発素材と品質追求をした世界観を感じることができました。
デザイナーのモニカ・アルマーニは度々来日されているとのことで日本の文化やデザインを参考にしているとのことでしたが、そのせいなのか新しさの中にも日本のノスタルジックな趣きをヒントにデザインされたファニチャーは不思議と落ち着きを感じます。色味が極力抑えられた設えが、上品さや気高さ、品質の高さが際だっています。
太陽の光を再現した演出
今後のガーデンファニチャーの潮流としてはTRIBUのような色味の抑えた自然でナチュラルな方向性のものと、色使いがビビットで華やかな印象のものとで二極化していきそうです。
以上、今回は4ブランドを紹介させていただきましたが、ミラノサローネの展示会場とは違い、フォーリサローネではリアルを想像させるガーデンファニチャーの使用方法や既存樹木の活用などヒントがふんだんに盛り込まれたプレゼンテーションの数々が印象深く心に残っています。各ブランドごとに個性がありそれぞれに良さがありました。今後、どのようにガーデンファニチャーを提案していくべきか自分自身の引き出しが増えた思いです。
皆さんにも参考にしていただければ幸いです。
バックナンバー
【第12回】ミラノデザインウィーク2023 報告❶ 渡航前の準備とミラノサローネ会場出展のガーデンファニチャーブランドの紹介