コラム

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SANKYO WOMANスペシャルコラム


富田 絵里香(Tomita Erika)

富田 絵里香(Tomita Erika)

  所属先

  AREA 外構&お庭の設計事務所・手描きの図面屋

  保有資格

 ・1級造園施工管理技士
 ・一般社団法人 日本エクステリア設計協会正会員

  庭への想い

  手描き一筋、暮らしと夢のAREAを描き続けます。
  付加価値が感じられる住まいの提案を心がけ、
  住み心地、デザインの満足度を高めていきたい。

  ~主な経歴~

  ハウスメーカーエクステリア部門、外構設計施工会社 15年間勤務を経て独立
  AREA外構&お庭の設計事務所立ち上げ12年目になります。

主な作品
主な作品

【 第10回 】ガーデンファニチャーの視察とショールーム巡りパート2

皆さんこんにちは。

前回は青山界隈のガーデンファニチャーを取り扱うラグジュアリーインテリアブランド巡りを投稿しましたがいかがだったでしょうか。

一般のご家庭ではまだ庭で過ごす空間を求められることはそれほど多くないので ”私はまだ知らなくても大丈夫“と思っていはいませんか?

近年ホテルやレストランなどの商業施設では軒並みテラス席を設けた空間が増えたことは間違いなく、以前とは違って屋外で過ごすことが当たり前の日常になりつつあるかと思います。
ういった場所で体感した心地よさを自宅にも求める方もジワジワと増えつつあると実感している今日この頃ですので、私自身も屋外テラス空間がある場所へはできるだけ多く訪問できたらと思い、
レストランやホテルを選ぶときは「テラス席」をキーワードにして検索し探しています。

  そんな中で訪問したとあるホテルなのですが、失敗例?惨状?ともいえる残念な話を少しさせていただきます。

オープンして1年ほどの有名なラグジュアリーホテルなのですが、ホームページでは植物も多く、夜のライティングも素敵なビルの上階にある屋外テラス付きレストランでしたのでワクワクしながら訪問しました。

しかし、テラス席は使用している様子がない。。。変だな?と思いつつも見に行くと、全てではないのですが一部の植物がフェイクグリーンが使用され粗悪品かと思わせるように紫外線によってか色が変色していました。そしてファニチャーは屋外用とは思えないものが置かれてあり朽ち果てる寸前のものだらけ。。。

有名な一流のホテルでなぜこの様な惨状になったのかは不明ですが室内用のファニチャーでは1年程度でも朽ち果てることがわかりました。なぜ屋外用を使用しなかったのか残念な気持ちでいっぱいになりました。

しかし、屋外用として販売しているものでも必ずしも耐久性に優れているかは分かりませんので、やはり私たちが施主の方へおすすめするガーデンファニチャーは、室内とは違って自然環境に大きく影響されますので確かな実績や耐久テストなどをクリアしたものを知っておく必要があるなと確信しました。そして素材の違いやメンテナンス方法も知っておく必要がありまね。

某ホテルのテラスレストランのチェアー

先日、軽井沢の別荘のプラン作成依頼がありましたが、今までの私ならもしかするとウッドデッキだけの提案で終わらせていたかも知れなかったわけですが、さまざまな場所へ訪問し写真を保管してありましたのでそれを参考にしつつ、ガーデンファニチャーの知識も勉強していたので自信を持って提案できました。

もちろん、庭を心地よく過ごす空間にするためには日陰作りや目隠し、植栽など必要な要素は沢山ありますが、ファニチャーを置いて提案をすることで、座る、食事をする、寝転がるといった生活時間が施主の方が直感的に伝わり、心地よく過ごすガーデンリビングを想像できるかと思います。単に物売りで終わらせないようにライフスタイルの提案をすることが大切だと感じました。

  私が訪問してきた場所の話に戻りますが、12月上旬に沖縄の東海岸に位置するホテル「ひらまつ」にも行ってきました。

こちらのホテルを選んだ理由は、1958年に日本ではじめてガーデンファニチャーの販売店とスタートされたニチエス株式会社の取り扱っているTRIBU(トリビュ)やDEDON(デドン)といったブランドのファニチャーが各部屋やラウンジなどに数多く置いてあるからです。以前から何度かニチエスさんのショールームへは伺っていたので商品への信頼感は強くありましたが、沖縄のように紫外線が強く、強力な台風がきたり、景色は最高ですが海が目の前なので塩害の影響を受けやすい過酷な状況でも大丈夫なのか?といった疑問もあったからです。

こちらのホテルはオープンしてから3年半程です。ファニチャーは基本的にかなりの強風時以外は置きっぱなしとのことですが、とても綺麗な状態で保たれていました。しかし、強風の際に海水の飛沫が届いてきてしまう様な一部の場所ではビスに錆を発見しました。とは言え、かなりイレギュラーな過酷な状況の場所ですのでその程度は許容範囲と考えた方が良さそうです。ファニチャー刑事かのようにジロジロと見なければ気が付かないかもしれません。自然あふれる南国の楽園をガーデンファニチャーで過ごす時間は格別です。

今度沖縄に行く予定がある時はホテル選びのヒントにしてみてはいかがでしょうか。

沖縄のホテル「THE HIRAMATSU」


TRIBU(トリビュ)やDEDON(デドン)は最近色々な商業施設で見かけるようになりましたが、皆さんには、渋谷区千駄ヶ谷にあるニチエス株式会社東京ショールームへも是非行って欲しいと思いましたので、ここからは、ショールームとともに取り扱いブランドの紹介をします。

2021年の3月にスケールアップしてリニューアルオープンされています。今までの3倍程の広さでしょうか、天井も高く大きな開口部が3箇所あるため開放感があり、室内にいながらもアウトドアを感じる中にアウトドアファニチャーのコーディネートがされているので、直感的にブランドの世界観を肌で感じられつつ、家具の組み合わせ、ファブリックの色選び、照明等の合わせ方などトータルで参考になるしつらえです。

季節に合わせながら展示商品も変化させているとのことでしたが、私が伺った時には、メインエントランスを入るとベルギーのブランド、TRIBU(トリビュ)のトスカデイベットを中心にソファやアームチェアなどトスカシリーズが多く展示されていました。

ニチエス株式会社ショールーム
エントラス付近にはTRIBU
トスカシリーズのデイベッドを中心に展示されています。

このトスカ、私がとても好きなシリーズ。

私自身が知ったのは3年ほど前ですが既に10年以上も前に発表されたそうですが、いまだに人気が続いているそうです。大きな特徴は背もたれの部分がニット素材を大きく編み込んだようなフォルム。これがアウトドアで使用できるなんてと未だに信じられなほどの見た目と質感ですが、その点はもちろん心配ありません。沖縄でも大丈夫でした!

独自開発された全天候型素材として屋外耐候性に優れた品質を確保しています。女性が好みそうなエレガントさや可愛らしさがありますが、甘くなりすぎないようブラック系、グレー系の色味でまとめることで格好良さが生まれシンプルなモダン空間にも映える存在感があります。

トスカシリーズはニット素材を大きく編み込んだ様な背面が特徴です。


TRIBUではファブリックがポリプロピレンやアクリル素材で作成されており、140~150種類という驚きの数が用意され3つのグレードから好きな色柄を選ぶことができます。ベルベットのような短毛で光沢があるもの、ツイードのような織り目がはっきりとしたものなどインドアと遜色の無い見た目と手触りで驚きが続きます。

実際に人気のファブリックはどれかとお伺いしたところ、汚れが目立ちづらいグレー系や何色かの糸を織り合わせたものが好まれる傾向にあるそうです。もし汚れが目立ちやすいホワイト系を選ぶ場合のポイントとしては塩素系洗剤も使用できるアクリル系素材のものがメンテナンスがし易いとのことでおすすめされました。

140~150種類の選べるファブリック
トスカシリーズ以外にも、側面から見るフォルムが素敵なELIOや、耐候性トリコードで織られた背もたれのCTRチェアなど魅力的なファニチャーが多数見ることができます。
それぞれ透水性、撥水性など優れた素材で製作されていると共に、もし濡れた後にでもメンテナンスしやすく乾燥させやすい構造となっているので安心です

TRIBUのELIO。
チーク材の脚は側面からのフォルムが美しい。

TRIBUの耐候性トリコードで織られた背もたれのCTRチェア

簡単に取り外しが可能な座面とカバーのファブリック。
速乾性の高い中材。


ショールーム内には、ドイツのブランドDEDON(デドン)も多く展示されています。

DEDONの特徴は自社開発された耐久性優れたDEDONファイバー。フィリピンセブ島の職人が一つ一つ手編みで製造されています。近年では石油を使わないサトウキビの廃材を使用するなど、環境に配慮した取り組みにも積極的に商品開発も進められているようでした。

DEDONのエンブレイスは編み込んだデドンファイバーが特徴的

DEDONはデザインも特徴的なものも多く、幌が着いた円形デイベットのオービットや、繭のようなハンギングポットのネストレストなどアイコニックなファニチャーも多く、印象的な空間作りのオーナメントになる存在としても活用できそうです。

円形デイベットのオービットは、見えない下のところに車輪が付いているのでサイズが大きくても移動が簡単にできます。室内とテラス空間の間に広めの開口部を設けておけばインとアウト両方で楽しめる使い方もできたたり、日差しが気になる方向に幌を向けることも容易にできます。機能面でも優れたファニチャーです。

奥にある円形のデイベッドがDEDONのオービット

昨今シングルのスウィングチェアも人気とのことで、天井釣りタイプとアームで吊り下げタイプそれぞれ展示がありました。アウトドアだからこそ使いたい、そう感じる面白さと楽しいデザインです。

DEDONのスイングチェア
天井吊り下げタイプとアーム吊り下げタイプ


TRIBUやDEDONは特徴的なデザインや、柔らかな曲線のフォルムのデザインが比較的多く展開されていますが、シンプルで直線的なモダンデザインがお好みの方には、スペインのイビザ島のアウトドアリビングライフから生まれたGANDIA BLASCO(ガンディアブラスコ)のソファがおすすめ。ルーバー状のフレームで構成され、ファブリックを外しても素敵です。

GLOSTER(グロスター)のチーク材ユニットと組み合わせができるソファーもおすすめかなと思います。建築全体のコンセプトや施主の好みに合わせて提案できるように、各ブランドデザインの特徴を覚えておくといいですね。

写真奥、GLOSTERのソファユニット

上記で紹介したブランドはラグジュアリーなハイクラスブランドに位置付けされますが、チェアーが一脚数万円から購入できる価格帯のカジュアルなブランドもあります。

代表的なところではフランスのFERMOB(フェルモブ)。限られたスペースに最大限の席数を確保したいカフェオーナーの要望に答えて1889年に開発されたビストロシリーズ。今でも多くのカフェなどで使用されていますので皆さんも一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。

ランスらしい発色の良い華やかな色や、派手になりすぎないスモーキーカラー、ブラックなど色選びによって様々なコンセプトの空間に対応できそうです。軽量でコンパクトに折り畳めるシリーズもあるのでベランダなどの狭い場所にも対応も可能です。

カラーが豊富なFERMOB,色の違いで印象がかなり変わります。

ガーデンリビングの提案の際は、日陰づくりも非常に重要なポイントになりますが、パラソルも多くの展示されています。

パラソルの大きさ、ベース部分のサイズや重さ、傘の開閉操作、移動方法、収納時のサイズもチェックしておきたいポイントです。

パネルを扇子の様に広げて使用する、面白いパラソルもありました。


ファニチャー本体のメンテナンスですが水洗いOKとのこと。(高圧洗浄は不可)

・ファニチャー本体の洗浄後は乾きを早くするためにも取り外せる座面は立てかけるなどして風通しよくしてください。

・湿った状態が長く続くことでカビの発生原因になりますので気をつけましょう。ファブリックは表記に従って洗い、乾燥機の使用は避けてくださいとのことです。

長期間使用しない時は保護カバーの使用を推奨されていますが、自然豊かな積雪のあるような地域では保護カバーをすることで保温効果が生まれ虫が集まりやすくなる為に死骸がカビの原因になるので使用はしないほうが良いそうです。

ニチエス(株)ではガーデンファニチャー専門販売店だけあって、紫外線、塩水、塩素、日焼け止め、過酷な気温に対する耐久試験がおこなわれているブランドを取り扱い、耐久性に関してとても自信を感じました。安心して施主の方へ提案できるファニチャーが揃っています。

リニューアルオープン前のショールームスペースも常時展示がされています。

今回、私は東京在住のため東京ショールームへ伺いましたが、大阪市西区にもありますので行きやすい方へ訪問してみてください
関西ですと京都のフォーシーズンズホテルにも置かれているので体感したい方、気になる方は是非そちらもおすすめです。

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