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SANKYO WOMANスペシャルコラム


富田 絵里香(Tomita Erika)

富田 絵里香(Tomita Erika)

  所属先

  AREA 外構&お庭の設計事務所・手描きの図面屋

  保有資格

 ・1級造園施工管理技士
 ・一般社団法人 日本エクステリア設計協会正会員

  庭への想い

  手描き一筋、暮らしと夢のAREAを描き続けます。
  付加価値が感じられる住まいの提案を心がけ、
  住み心地、デザインの満足度を高めていきたい。

  ~主な経歴~

  ハウスメーカーエクステリア部門、外構設計施工会社 15年間勤務を経て独立
  AREA外構&お庭の設計事務所立ち上げ12年目になります。

主な作品
主な作品

【 第11回 】 私が好きな東京テラス席のあるお店

近頃、バイオフィリックデザインという言葉を耳にする事が増えましたがご存知でしょうか。

オフィスに自然を感じることができる要素を取り入れ、生産性の向上やストレスの軽減、空気の正常化などが期待できるとのこと。

私自身はコロナ禍以降、事務所兼自宅での仕事が増え以前のコラムでも書きましたが、室内やテラスにと多く植物を設置していたので、他者とのコミュニケーションが取りづらい時期でもどうにか乗り切れているような感覚がありました。

それ以降特に外出する際もできるだけ自然を感じられる場所に行きたくなりました。

そんな時は、自然を感じる事ができる植物を多用したテラス席のあるお店を探して伺うようにしています。

近年、東京都心部にもテラス席のあるレストランやホテルが増え続け、最先端のデザインが盛り込まれ植物との調和も優れた空間演出がされているので、
自分自身の仕事に通ずるものがあり、ガーデンリビングの設計などの際のヒントも多く役立っています。

今回はそんなテラス席のあるお店の中からお気に入りの素敵な3店を紹介したいと思います。



まず1店目は、数年前からお気に入りの場所、表参道のGENTLE(ジェントル)です。

車通りの多い青山通りから1本路地を入ると、今までの喧噪が嘘のような緑豊かなテラス席のある隠れ家レストランが現れます。

アプローチは網代模様のレンガ敷き。植物のトンネルを抜けるかのように店内への動線がありつつ、その横のエリアにテラス席が設けられています。

トンネル効果のあるその樹木はテラスエリアとの仕切りでもあり、視線を遮る目隠しとしての役割も兼ねていて、店内へ出入りする人の視線を気にすることないゆったりと過ごすことができる空間造りができていました。

寒い時期にはガス式のパラソルヒーターが置かれているため冬場も安心して利用できそうです。

店内のしつらえも素敵で、ソファやスツールは用途別に色とりどりに配色されているのですが、ベルベット素材のせいか華やかさはあるものの派手になり過ぎずクラシックな印象さえ感じます。

黒い窓枠やゴールドの真鍮がアクセントとなり、照明など細部にこだわりのあるデザインは大人の男性にも好まれる上質な空間が広がります。

1階に地中海料理店、バーカウンターが併設され、地下1階に鮨処もあり、一軒家レストランのようでありながらもホテルのラウンジレストランのようにシームレスに多様な過ごし方が体験できます。

行ったことがある人だけが気が付く階段踊り場の面白い仕掛けなどもありますので、是非一度訪問して発見していただきたい。

こでは内緒にしておきます。


以前ご紹介しましたガーデンファニチャーのあるショールームも徒歩圏内に数多くありますので、ショールーム巡りをするときのランチやディナーの場所として行ってみてはいかがでしょうか。

周辺には、フィンランド発のライフブランドで隈研吾氏がデザインのイッタラ表参道ストア&カフェがあったり、お城のような佇まいの青山セントグレース大聖堂が突如現れたりと見て楽しい場所も多くありますので、お店に行く際は表参道通り側から路地裏を散歩しながら行くこともお勧めです。




次にご紹介するのは、丸の内1ー1ー1に位置するという枕言葉がつく東京の中心地、ビジネスの中心地に佇む五つ星ホテルのパレスホテル東京のオールデイダイニング「グランド キッチン」です。


ホテルは10年程前に一新されたものの、半世紀以上の歴史を持ち、皇居外苑に隣接する建物として周辺環境との調和と一流ホテルとしての品格にこだわったラグジュアリーホテルです。

ロビーラウンジ「ザ パレス ラウンジ」を抜けると、そこはオールデイダイニング「グランド キッチン」が

開放感をもたらす高さ約6mの窓の外にテラス席を備えたレストランです。

チーク材のファニチャーをメインにし、室内よりも少しカジュアルな雰囲気ですが、都心でありながらも上品で静かな落ち着きがあり、心地よい風を受けながらリラックスできるそんな空間。皇居外苑の内堀と石垣、和田倉噴水公園の緑が借景となり、それはまるでホテルのプライベートガーデンのようです。

日本の歴史的な趣きも味わえる好立地。一層の希少価値を高める大きな要因になっています。

建物の上階部分が庇のように存在しますが、室内と同じく6mの天井高となるため開放感に支障は無く、直射日光を遮る効果と多少の天候の悪さにも対応できそうな機能も兼ねているようです。

以前、テラス席で過ごした際には、夕暮れが始まると各テーブルにランタンが置かれていき、更に夕闇が迫ると柱に取り付けられた照明などが優しく灯りだし、完全に陽が落ちると更に照明の光がプラスされていきました。

そんな自然の夕暮れに合わせたさりげない光の演出にもホスピタリティの高さを感じ感動しました。

夜になり室内の席へ移動させていただきましたが、五つ星ホテルのレストランらしい品の良いモダンなデザインでバイオエタノール暖炉などもあるラグジュアリーな空間が広がりつつも、オープンキッチンでライブ感が溢れるため、堅苦しさを感じずにリラックスでき気分が盛り上がります。

白と黒のタイルが特徴的な一角は、皇居外苑の緑と呼応するように植物がインテリアとして取り入れられ、都会の喧噪から離れてまるで夢の国にいるような雰囲気を楽しむことができます。

そんなテイストが違った空間がありながらも一体感を感じる。それも楽しさの一つです。




そしてもう1店舗、パレスホテル東京からもほど近い東京駅、大井町駅から徒歩圏内の丸の内仲通りに接する丸の内テラス10階、丸の内のオフィスビルに囲まれた「THE UPPER」です。


テラス席はルーフトップに配されています。

エレベーターを降りると正面に現れるグリーンの大理石で作られた大きな壁に店名のTHE UPPERの文字がバックライトで浮かんでいます。

色使いとミニマルなデザイン要素で構成されたファサードに期待感が上がります。

私が伺ったのはランチの時間。室内は天井が高く自然光が降り注ぎとても心地よい。テラス席との境界は温室のような天窓(そこに吊るされた植物の鉢が多数)、高さのある掃き出し窓がフルオープンになっているので、二つの空間がシームレスに繋がっています。

テラス側にはパーゴラがあり、まわりのオフィスビルが気にならない目隠し効果を生み出し、室内側は解放感ある外を感じる天井高に比べ、テラス席側に設置したパーゴラはそれよりも低く設置してあります。そうすることで室内を思わせる囲いと空が抜け過ぎないようにと考えられているのかなと感じました。

ファニチャーや壁に飾られた絵には沢山の色が使用され、デザイン要素も多く存在しているのですが、鮮やかな色に少しグレーを加えたグレイッシュトーンが中心の組み合せであるために北欧デザインにみられる落ち着いた優しい印象です。

テラス席に配された鮮やかなオレンジ色のファニチャーなどがアクセントとなり、メリハリのある演出効果もなされています。

また心憎い演出としてテラス席にレースのようなカーテンが仕切りとして使用されているのですが、風にふんわりと揺れるさまがオフィス街ということをすっかり忘れてしまうひと時を味わうことができます。

丸の内テラスビルがある仲通りにはテラス席を併設した素敵な路面店が沢山あり、街路樹が美しい並木道には彫刻作品が楽しめる丸の内ストリートギャラリーや美術館もあり、車両規制もされて以前紹介しましたフランスのブランド、フェルモブのカラフラルなテーブルセットが置かれ、キッチンカーが出現することもあるので気軽にランチを楽しむこともできます。東京駅近くでお時間がある時には是非ショッピングやアート鑑賞など思い思いのを散策をしに行ってみてはいかがでしょうか。


ご紹介しましたレストラン、今回はお料理のことは書きませんでしたが、全店とても美味しくそれぞれ独創性がありこだわりを感じます。頻繁に行くには少々お値段が張りますが、自分へのご褒美が必要な時や気持ちをリフレッシュしたい時にお洒落して足を運んでみてはいかがでしょうか。

是非楽しいひと時をお過ごしください。


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